「SKIN」Hiroko Sueyoshi Planners, New York “Every object has a skin” すべてのものにはスキンがある、スキンとその中身の関係性を今日のデザイナーがいかに取り組んでいるのか、その挑戦ははかりきれない、クーパー・ヒューイット美術館で開催されている展覧会「SKIN」は、バイオテクノロジーを含む最新技術の発達によって、デザインが今や我々の生活環境のみならず、整形手術に代表されるように我々自体にまでおよぶようになっているその現状を改めて認識させるものとなった。一方、すべてがますます高度で複雑に多様化されていく現状下、そのテーマの重要性をいかに、限られた時間、空間、予算の中で展覧会としてコンテンポラリーデザインにおけるその取り組むの重要性を検証するのかという課題を考えさせるものにもなった。
展示は1997年以降にデザインされ従来の表面という定義の拡大に貢献したプロダクト、ファッション、ファニチャー、建築、メディアの世界中から集められた128のオブジェで構成されている。キュレーターはクーパー・ヒューイットのエレン・ラプトン(Ellen
Lupton)、過去10年間にめざましく普及しその発展はデザインのやり方に変化を与え複雑なカーブや柔らかさなどより生き物に近い表面をもちつつも人工的な要素を際立たせるオブジェやビルディングを制作するツールを提供している。
デジタルメディアの発展にフォーカスする、グレッグ・リン(Gregg Lynn)、ペトラ・ブラッシ(Petra
Blasse)、モーフォシス(Morphosis)、マルセル・ワンダース(Marcel Wanders) を初めとする著明なデザイナーの作品を展示、ファッションからプロダクト、建物、そして我々の生きたスキンを含む現代生活の中でいかにしてそれらのクオリティーの高い、シミュレートされた優秀なスキンが発見されたかを表している。
展示は人間のスキンの持つ機能に基づき5つにわけられている。 ・ Beauty, Horror + Biotechnology 展示はオブジェの他、写真、ビデオ、医療、アート、建築、エンターテイメント、娯楽、洋服、ファッション、日用品、戦争のフィールドまでカバーし、ハリウッドのフランケンシュタイン、そして最後のカテゴリーにはアメリカの陸軍からのコミッションでマウロ・タリアニ(Mauro Taliani) がデザインした兵隊を高熱から守るクーリングシステムベスト(冷却装置付ベスト)や原子力爆発まで加えられその範囲は膨大だ。
オフホワイトのスムースな表面のビニールでカバーされたスキンのようなパネルは各テーマごとのセクションの空間定義を行うと同時にギャラリー全体に広がるそれらのセクションをひとつにまとめる役目を果たしている。パネルのある部分を上昇させることによって各部屋内の特定のオブジェにハイライトを与える試みも巧みだ。 そのインスタレーションのそれらのフォルムとディテールは跳ね返るようなビニールのセンシティブな輝きでスキンとの連想を強調させ、カーブはまるでスキンが剥がれるような効果を演出している。マテリアルと構造に忠実でモダニズムデザインに徹したARO のセンシビリティーがスキンのインスタレーションにブリリアントに生かされている。壁とプラットフォーム の沈み構造はスキンの表面の下にある筋肉のように赤くペイントしてある。 AROは2002年10月にオープンする同美術館のモNew Hotel for Global Nomadsモの展覧会の会場構成のデザインも手掛け、2003年にオープンするクーパー・ヒューイットの新しいパーマネントコレクションのギャラリーのデザインも行っているようだ。
(2002年7月) |
2002-07 |