What's in New York

「PRADA SOHO」オープン

Hiroko Sueyoshi Planners, New York

昨年12月中旬、予定より略一年遅れで元グッゲンハイムのSOHOの一階と地下部分2400平米のスペースに待望のレム・コールハースのデザインによるプラダのフラグシップストアがオープンした。オープニングセレモニーは12月15日、NY市長、ジュリアーニ、俳優のアンソニー・ホプキンス、ケビン・スペーシーなど、各界の大物、セレブリティーが続々と登場して動くのさえ困難な混雑ぶりだったようだ。
パーティー会場は隣のマーサーホテルのレストランもパーティーの開始時間は10時から夜中までとクラブなみ。最近、オープニングやクリスマスパーティーを夜の10時から行うデザイナーのオフィスなどがあり、挨拶だけをすまして次ぎのパーティーへ引き上げるゲストの最終地点を狙い懇親を深め、楽しませる工夫もみられている。

「PRADA SOHO」は、マテリアルをはじめほとんどの建築要素に実験的な試みがされ、工事費は40ミリオンドル、日本円でおよそ52億(1$=130円)、通常NYのハイエンドのリテールストアが1スクエアあたり$500〜$700に対してこのプラダの場合2倍以上。リサーチ結果を建築要素に取り入れるコールハースは、自らが教鞭をとったハーバード大学の建築デザイン学部大学院のスタジオの課題としてこのプラダのプロジェクトのリサーチを行い、その結果もこのショップデザインに生かされている。ストア・デザインばかりでなくプラダのマーケティング・戦略を手掛けるコールハースのデザイン力で宣伝の役目となる要素は充分にあるとしても今後いかにこれらの巨額建築工費がペイされていくか注目の的である。

NYタイムス紙によるとプラダの売り上げは昨年56.6%アップで、2001年の上四半期は24.9%アップという成長率にも関わらず、現在までの負債額が1.6ミリオンドル(およそ208億円)にもおよぶという。株上場の機会が過去にあったが9月11日のテロ事件の影響もあり、その計画は実現されず、最近、62.4ミリオンドル(およそ81億円)の社債を発行したと言われる。

「PRADA SOHO」は、ブロードウエイ側がメインエントランスだが、裏のマーサーストリートからもアクセス可能、その為、エントランスから奥までの長い空間、エントランス左のクリアガラスのシリンダー型のエレベーターが目を引く。コールハウスはこの1、2階のインテリアデザインのコンセプトをウエーブとしていて、一階から地下をつなげ、うねっているモチーフは壮大だ。地下の売り場に続くエレベーターの後ろの全空間中央に、その、輝く天井と壁に囲まれ、地下からスロープで繋いだ巨大な波がうねっているようなオープンスペースがあって、オープニング用にそのスロープを階段にして、人々が座っている光景は、まるで美術館や大学のキャンパスのメインエントランスの石段を思わせ、インテリアというより、むしろ外のような空間だ。そのスロープのある空間は展示会場にも使用できる他、スロープを階段にして靴などの陳列ができ、空間自体を用途によって変えることができる。

店内のウォールペーパーはNYの2×4スタジオのデザイン。デザインは新しいコレクションが発表されるごとに変えられる。

(2002年2月)

2002-02